【読みもの】百色の青森 津軽びいどろを訪ねて

  • 百色の青森 ストーブ列車
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青森をつくる いろ ひと こと

津軽びいどろ』の生まれた青森県の多彩な「いろ」と「ひと」と「もの」、そして「こと」を訪ねて取材、土地の魅力を発信していくコンテンツです。今回は、青森の冬の風物詩として愛されている『ストーブ列車』に乗車。その味わい深さやたのしさについてご紹介します。

青森をつくること

津軽の風景を味わう「ストーブ列車」 津軽の風景を味わう「ストーブ列車」

“だるまストーブ”にあたりながら雪原を走る、
津軽鉄道の人気列車。

立佞武多で有名な五所川原市から太宰治ゆかりの地・金木を経て、津軽中里までを走る津軽鉄道。昭和5年に五所川原・金木間で開業し、本州最北の私鉄として津軽の暮らしを支えてきた津軽鉄道は、列車の窓から眺める四季折々の景観が美しく、観光列車としても注目が集まっています。なかでもとくに人気の高い、ユニークな取り組みが「ストーブ列車」です。

列車がお目当ての旅

乗りたい列車があるから
行きたい所ができて
知らなかった景色にも
出会うことができる。

誰かのために、走る。津軽鉄道の名物列車。

冬季限定の「ストーブ列車」はその名の通り、車両の中にストーブが設置された列車のことで、1両につき2基の“だるまストーブ”が車内を暖めてくれます。昭和5年から続くこの取り組みは、雪深い津軽の地で開業した私鉄ならではのもの。簡単には遠くへ移動できなかった時代に、津軽の人の働き方・学び方・暮らし方を広げるために走った鉄道だからこそ、寒い冬には列車にストーブを、というアイディアに思い至ったのかもしれません。

大戦中の休業や、自動車の普及による利用者数減少などの理由で廃線の危機もありましたが、このストーブ列車を愛する声は多く、毎年冬の風物詩として今なお津軽の平原を走り続けています。ほかにも津軽鉄道では、夏季の「風鈴列車」や秋季の「鈴虫列車」のように四季の彩りを添える列車があり、その情緒豊かな時間は旅行客の方にも人気です。

日本で唯一走り続ける、
ノスタルジックな車内。

入り口はガラスの嵌った木の引き戸、時刻表は筆の手書き。昔ながらの趣が残る津軽五所川原の駅から、ストーブ列車は1日に3往復走っています。ストーブが付いている車両と、暖房のついた普通車両「走れメロス号」が連結していて、ストーブ車両には別途乗車券が必要となります。メロス号は主に地元の方が利用する車両だからか、持ち寄りの小さな本棚なども備え付けてあり、津軽に暮らす誰かが選んだ本を片手に、津軽の景色のなかを走る…というのも楽しそうです。

ときには見渡す限りが真っ白になることもある、という津軽鉄道。雪が吹き付ける冬のホームから乗り込むと途端に暖かく、昭和初期にタイムスリップしたかのような空間が出迎えてくれます。床にも壁にも木の板が張られていて、座席も木製。現存する車両のうち現役で走っているのは、このストーブ列車だけなのだそうです。また、ノスタルジックな内装に似合うやさしい暖かさは“だるまストーブ”によるもので、中で朱色に燃える石炭の香りが、車内ではほんのり甘く感じられます。近くの席に座れば、焚き火やキャンプファイヤーのようにどこかピリッとくる火の熱さが心地よく、冷えた指先や雪道を歩いたつま先まで、じんわりと温まっていくのです。外で染みた冷えが落ち着くと、暖かい座席では上着がいらないほど。網棚をたわませて荷物をおさめたら、金木駅まで23分・津軽中里駅まで41分の短い旅がはじまります。

時を旅する感覚

カタンカタンと雪原を行く
懐かしい世界。
この中では時間を忘れて
この中では時代を超えて。

石炭の燃える“だるまストーブ”と
津軽の味を堪能。

車窓には、晴れの日には一面に広がる雪原が、ときにはホワイトアウトのような白の世界がと、さまざまな雪景色が流れていきます。また、ストーブ列車には津軽半島観光アテンダントの方が乗車されていて、車窓から見える雪深い津軽だからこその生活様式や、駅にまつわるお話などを、簡単な津軽弁を交えながら教えてくれます。そのため、話を聞きつつ景色を眺めているだけでも充分に楽しいのですが、ストーブ列車の醍醐味はなんと言っても車内販売、そして“スルメ”です。青森はスルメイカの水揚量が日本一で、その美味しいスルメを、なんと車内のストーブで炙っていただけるのです。

石炭の燃える“だるまストーブ”には焼き網が備えてあり、購入したスルメをその場で炙ることができます。アテンダントさんや販売の方が上手に焼いてくれるので、初めてでも安心です。パチパチという音と一緒に焼きスルメの香りが広がる瞬間は、なんとも贅沢さを感じます。熱々のスルメは空間の魅力も含めて、ここでしか味わえない美味しさです。「じょっぱり」で有名な六花酒造が、ストーブ列車のためだけに造る辛めの日本酒「ストーブ酒」と合わせれば、まさに言うことなしのひと時となります。
ほかにも、石炭をイメージしたクッキーや、運が良ければ購入できる手作りの絶品笹餅など、地元で人気の一品が販売されています。ストーブに面した席は4つずつ、1車両に8席しかありませんが、ストーブやスルメを堪能したあとは遠くの座席へ声をかけ、交代する方が多いことも印象的です。思いやりではじまったストーブ列車のあたたかさは、人のあたたかさでもあったのだと実感します。

こころの贅沢

パチンパチンと音を立てて
香ばしく仕上がった
スルメと一緒に
日本酒をいただく贅沢。

津軽鉄道の主な駅は...

  • 津軽鉄道の出発点(上り)。地域の名産品が売られている売店は必見。五所川原は青森にある3つのねぶた・ねぷたのなかでも、20m以上の高さが雄大な立佞武多が有名。津軽五所川原駅の近くには立佞武多の館がある。
  • 交流プラザが併設された駅。津軽鉄道の中間地点で、五所川原でストーブ特別券が購入できなくとも、金木で降車客があればストーブ車両へ移動できる。金木は太宰治誕生の地で、生家の斜陽館やミュージアムがある。
  • 津軽鉄道の終着点。地元のお母さんたちがつくる食事が美味しく、この土地ならではの一品も。地域の物産品コーナーや資料展示スペースも併設されている。津軽鉄道の歴史や詳しい車両について知りたい場合はここへ。

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